取引先に送る見積書や、社員の情報が入った名簿など、Excelのファイルを他の人に見られたくない場面は少なくありません。
そうしたときは、ファイルにパスワードを付けておくと安心です。
ただ、入力する画面には「読み取りパスワード」と「書き込みパスワード」の2つの欄があります。
どちらに入力すればよいのか、違いが分からず迷う人も多いのではないでしょうか。
一度付けたものを外すやり方が分からない、解除できないという悩みもよく聞かれます。
この記事では、Excelファイルにパスワードを設定する方法と、解除する方法を順を追って紹介します。
2種類の違いと使い方に加えて、取引先への送付や社内共有での具体例も取り上げます。
最後に、解除できないときの原因と注意点もまとめます。
なお、セルを編集しようとして保護されているという警告が出る場合は、ファイルではなくシートの保護が原因です。
その場合の解除方法は、シートの保護で編集できない原因を解説した記事で詳しく紹介しています。
Excelファイルのパスワードとは?読み取りパスワードと書き込みパスワードの違い
Excelのファイルに付けられるのは、読み取りパスワードと書き込みパスワードの2種類です。
前者は「ファイルを開く人」を、後者は「上書き保存する人」を限定するためのものです。
どちらか一方だけ付けることも、両方を組み合わせることもできます。
名前の似た機能に、シートの保護とブックの保護があります。
4つの違いを表にまとめると、次のとおりです。
| 種類 | 設定する場所 | 知らない人ができること |
|---|---|---|
| 読み取りパスワード | 「ファイル」タブの「情報」、または「全般オプション」 | ファイルを開けない |
| 書き込みパスワード | 「全般オプション」 | 読み取り専用で開ける(上書き保存はできない) |
| シートの保護 | 「校閲」タブ | ファイルは開けるが、ロックされたセルを編集できない |
| ブックの保護 | 「校閲」タブ | シートの追加・削除・名前の変更などができない |
上の2つはファイル全体にかける鍵、下の2つは開いたあとの操作を制限する鍵だと考えると分かりやすいでしょう。
この記事では、上の2つのファイルにかける鍵を扱います。
読み取りパスワードとは?ファイルを開ける人を限定する
読み取りパスワードを付けたファイルを開くと、最初に入力画面が表示されます。
ここで正しい文字列を入力しない限り、中身は表示されません。
メールの誤送信やUSBメモリの紛失でファイルが人の手に渡っても、中身を見られにくくなります。
たとえば「見積書.xlsx」に読み取りパスワードを付けた場合、開くときの流れは次のとおりです。
1. ファイルをダブルクリックすると、「パスワード」の画面が表示される
2. 設定した文字列を入力して「OK」を押す
3. 正しければファイルが開き、間違っていれば開けない
書き込みパスワードとは?読み取り専用で開いたときの動き
書き込みパスワードを付けたファイルを開くと、入力欄と一緒に「読み取り専用」というボタンが表示されます。
正しい文字列を入力して「OK」を押せば、編集も上書き保存もできる状態で開きます。
知らない人でも、「読み取り専用」ボタンを押せば中身を見ることはできます。
読み取り専用で開いた場合も、セルの値を書き換えること自体はできます。
ただし、元のファイルに上書き保存することはできません。
「中身は誰が見てもよいが、勝手に書き換えられては困る」ファイルに向いた設定です。
両方を付けた場合は、読み取り用、書き込み用の順に入力を求められます。
最初の1つ目が分からなければ、読み取り専用のボタンまでたどり着けません。
シートの保護との違いとは?解除する場所と守れる範囲を比べる
初心者が混同しやすいのが、書き込みパスワードとシートの保護です。
どちらも書き換えを防ぐ機能ですが、守り方が異なります。
シートの保護は、ロックしたセルへの入力そのものを止める機能です。
これに対して書き込みパスワードは、セルの入力は止めずに、元のファイルへの上書き保存を止めます。
入力欄だけを開けておき、数式のセルを守りたいといった細かい制御は、シートの保護のほうが向いています。
ファイル全体を誰が更新できるかを決めたいなら、こちらが合っています。
鍵を外す場所も異なり、シートの保護は「校閲」タブの「シート保護の解除」から外します。
書き込みパスワードは、保存の画面の「全般オプション」から外します。
実務では、「ファイル」タブの「情報」にある「ブックの保護」と、「校閲」タブの「ブックの保護」の混同にも注意が必要です。
名前は同じでも、前者はファイルを開く鍵を付けるメニューで、後者はシートの追加や削除を止める機能です。
解説記事を読むときは、どちらのタブの話なのかを確かめてから操作すると迷いません。
なお、入力画面が出ないのにファイルが開けない場合は、パスワード以外に原因があります。
ファイルの破損や拡張子の違いなど、ファイルが開けないときの原因と対処法は別の記事で整理しています。
Excelファイルにパスワードを設定・解除するやり方|2つの画面の違い
Excelでファイルに鍵を付ける画面は2つあります。
「ファイル」タブの「情報」から付ける方法と、保存の画面の「全般オプション」から付ける方法です。
前者は読み取りパスワードだけ、後者は2種類とも設定できます。
「パスワードを使用して暗号化」で読み取りパスワードを設定する
ファイルを開く鍵だけを付けたいなら、「情報」から設定するのが手軽です。
1. 「ファイル」タブをクリックし、「情報」を選ぶ
2. 「ブックの保護」をクリックし、「パスワードを使用して暗号化」を選ぶ
3. 好きな文字列を入力して「OK」を押す
4. 確認のためにもう一度同じ文字列を入力し、「OK」を押す
5. 「上書き保存」でファイルを保存する
最後の手順5まで行って、はじめてファイルに鍵がかかります。
次に開いたときに入力画面が表示されれば、設定は完了です。
「全般オプション」で書き込みパスワードを設定するやり方
書き込みパスワードは、保存の画面から設定します。
1. 「ファイル」タブの「名前を付けて保存」から保存先を選ぶか、F12キーを押して「名前を付けて保存」の画面を開く
2. 画面右下の「ツール」をクリックし、「全般オプション」を選ぶ
3. 「書き込みパスワード」の欄に文字列を入力し、「OK」を押す
4. 「パスワードの確認」の画面で同じ文字列をもう一度入力し、「OK」を押す
5. 「保存」を押し、上書きの確認が出たら「はい」を選ぶ
同じ画面の「読み取りパスワード」の欄にも入力すれば、2種類を一度に設定できます。
その場合、確認の画面は読み取り、書き込みの順に2回表示されます。
使わないほうの欄は、空欄のままで構いません。
設定したパスワードを解除する手順
外すときも、付けたときと同じ画面を使います。
前提として、正しい文字列を入力してファイルを開いておく必要があります。
「情報」から付けた鍵は、次の手順で外します。
1. 「ファイル」タブの「情報」から「ブックの保護」→「パスワードを使用して暗号化」を選ぶ
2. 入力欄の文字をすべて消し、空欄のまま「OK」を押す
3. 「上書き保存」でファイルを保存する
「全般オプション」で付けた鍵は、同じ画面を開き直して外します。
欄に「*」で表示されている文字を消して「OK」を押し、上書きの確認で「はい」を選んで保存します。
上書きできないときは、別の名前で保存してから元のファイルと入れ替える方法もあります。
実務では、鍵を付けるファイルを.xlsx形式で保存しておくことも大切です。
拡張子が.xlsの古い形式は暗号化の仕組みが古く、解読されやすいとされています。
初心者がつまずきやすいのは、欄を空にして「OK」を押しただけで解除できたと思ってしまう点です。
最後に保存するまで、ファイルの鍵は外れていません。
また、ノートパソコンではF12キーだけでは画面が開かず、Fnキーと一緒に押す必要がある機種もあります。
手順で使ったF12キーのように、キーボードで画面を呼び出せるショートカットキーを覚えると作業が速くなります。
定番のショートカットキーと効かないときの原因は、別の記事でまとめています。
Excelのパスワード設定の使い方|取引先への送付と社内共有の具体例
付ける種類は、「誰に何をさせたくないか」で選びます。
社外に送るファイルは読み取りパスワードで中身を守り、社内で配る資料は書き込み用の鍵で書き換えを防ぐのが基本です。
ここでは、よくある2つの場面で使い方を見ていきます。
取引先に送る見積書には読み取りパスワードを付ける
取引先に見積書をメールで送る場面を考えます。
送る前に、ファイルに読み取りパスワードを付けておきます。
宛先を間違えて送ってしまっても、鍵を知らない相手はファイルを開けません。
大切なのは、パスワードをファイルと同じメールに書かないことです。
同じメールに書くと、誤送信したときに相手がそのまま開けてしまいます。
電話やショートメッセージなど、別の経路で伝えるのが基本です。
社内で配る集計表は書き込みパスワードで上書きを防ぐ
共有フォルダに置く、支店別の売上集計表を例にします。
| A | B | |
|---|---|---|
| 1 | 支店 | 売上(円) |
| 2 | 東京 | 420000 |
| 3 | 大阪 | 310000 |
| 4 | 名古屋 | 270000 |
| 5 | 合計 |
合計を出すため、セルB5に次の数式を入力します。
=SUM(B2:B4)
B5には、3つの支店の売上を足した1000000が表示されます。
B2からB4までの範囲を合計して、全社の売上を求める数式です。
このファイルに書き込みパスワードを付けると、鍵を知らない社員は読み取り専用で開くことになります。
読み取り専用でも、B2を450000に書き換えればB5は1030000に変わります。
ただし元のファイルには上書き保存できないため、閉じて開き直すとB2は420000に戻っています。
数字を試しに変えて計算してみたい人がいても、元の集計表が壊れる心配はありません。
更新担当者だけに鍵を伝えれば、集計表の正本を守りながら全員に見てもらえます。
別名での保存を防ぐには読み取りパスワードも必要
ただし、書き込みパスワードで防げるのは、元のファイルへの上書きだけです。
読み取り専用で開いた人も、名前を付けて別のファイルとして保存することはできます。
しかも、別名で保存したファイルには、この鍵が付いていません。
コピーを作られても困る資料なら、読み取りパスワードもあわせて付けておきます。
見せたくない情報を、書き込み用の鍵だけで守ろうとしないことが大切です。
集計表で使ったSUM関数は、指定した範囲の合計を求める基本の関数です。
SUM関数の使い方は、AVERAGE関数やVLOOKUP関数とあわせて別の記事で解説しています。
Excelのパスワードが解除できない原因と忘れたときの注意点
鍵を外そうとしてもうまくいかないときは、原因がいくつかに分かれます。
ここでは、初心者がつまずきやすい4つのケースと対処法を紹介します。
パスワードを忘れると解除できない原因と対策
読み取りパスワードを忘れると、ファイルを開くことも、鍵を外すこともできなくなります。
Microsoftの公式サポートでも、忘れた場合はMicrosoftでも回復できないと案内されています。
鍵を付けたら、社内の決まった場所に記録しておくことが欠かせません。
実務では、社外に送るのは鍵を付けたコピーにして、元のファイルは社内の決まった場所に残しておく方法がおすすめです。
こうしておけば、送った側が鍵を忘れても、元のファイルから作り直せます。
他の人が付けた鍵が分からないときは、作成者や管理者に確認するのが確実です。
大文字と小文字の違いで読み取りパスワードが通らない
正しいはずの文字列が通らない場合は、大文字と小文字の違いを疑います。
Excelのパスワードは、大文字と小文字を区別するためです。
たとえば「Sales2026」と「sales2026」は、別の文字列として扱われます。
CapsLockキーがオンになっていると、気づかないうちに大文字で入力されていることがあります。
「読み取り専用を推奨する」と書き込みパスワードの違い
「全般オプション」には、「読み取り専用を推奨する」というチェック欄もあります。
これをオンにすると、開くときに読み取り専用で開くかどうかを尋ねる確認が表示されます。
ただし「いいえ」を選べば誰でも編集できる状態で開けるため、鍵の代わりにはなりません。
書き換えを確実に防ぎたいなら、書き込みパスワードを設定します。
反対に、開くたびに確認が出て煩わしい場合は、このチェックを外して保存し直すと表示されなくなります。
読み取りパスワードを付けたファイルは共同編集できない
OneDriveなどで複数の人が同時に編集する共同編集は、鍵で暗号化したファイルでは使えません。
Microsoftの公式サポートでも、共同編集ができない理由の1つとして挙げられています。
共同編集を使いたいときは、読み取りパスワードを解除してから共有する必要があります。
共同編集ができない原因は、暗号化のほかにも保存場所やファイル形式などがあります。
共同編集の条件と確認の手順は、別の記事で詳しく紹介しています。
Excelのパスワード設定まとめ|守りたいものに合わせて種類を選ぶ
Excelのファイルに付ける鍵は、守りたいものに合わせて種類を選ぶのがポイントです。
最後に、この記事の要点を整理します。
- 読み取りパスワードは、ファイルを開ける人を限定する
- 書き込みパスワードは、上書き保存できる人を限定し、知らない人は読み取り専用で開く
- 読み取り用だけなら「情報」、2種類とも付けるなら「全般オプション」から設定する
- 解除するときは、同じ画面で欄を空にしてからファイルを保存する
- 忘れると回復できないため、元のファイルと記録を社内に残しておく
社外に送るファイルには読み取りパスワードを付け、鍵の文字列は別の経路で伝えます。
社内で配る集計表は、書き込み用の鍵で正本の上書きを防ぐと安心です。
セルの入力だけを制限したい場合は、シートの保護と使い分けましょう。
Excelには、ファイルの保護のほかにも仕事に役立つ機能が数多くあります。
どんな機能があるかを一覧で確かめたい場合は、Excelでできること一覧の記事を参考にしてください。







