Excelで数式の入ったセルをコピーして貼り付けたら、結果が0になって驚いたことはないでしょうか。
表の色や罫線だけをまねしたいのに、中の文字まで上書きされて困ったという声もよく聞かれます。
こうしたトラブルの原因は、普通の貼り付けがセルの中身をすべて貼り付けることにあります。
Excelには、貼り付ける内容を選べる「形式を選択して貼り付け」という機能があります。
計算結果の値だけや書式だけを貼り付けたり、表の行と列を入れ替えたりできます。
ただ、選択肢が多いため、どれを選べばよいかわからない人も多いと考えられます。
この記事では、この機能の使い方を、値・書式・行列の入れ替えの3つを中心に紹介します。
それぞれの違いを同じ表の例で比べ、場面ごとの使い分けと選び方も説明します。
数式を貼り付けると0になる原因や、この機能を選べないときの確認点も取り上げます。
数式をコピーすると結果が変わるのは、セル参照が貼り付け先に合わせてずれるためです。
この仕組みは相対参照と呼ばれ、絶対参照との違いを知っておくと貼り付けのトラブルも理解しやすくなります。
形式を選択して貼り付けとは?普通の貼り付けとの違い
普通の貼り付けとの違い|値のみや書式のみを選べる
形式を選択して貼り付けとは、コピーしたセルのうち、貼り付ける内容を選べる機能です。
Ctrl+Vの普通の貼り付けでは、値・数式・書式・入力規則などがまとめて貼り付けられます。
この機能を使うと、その中から必要なものだけを取り出せます。
例えば、取引先名のセルを黄色で塗りつぶした表から、取引先名を別の一覧表にコピーする場面を考えます。
普通に貼り付けると、取引先名と一緒に黄色の塗りつぶしも貼り付けられます。
貼り付け先の罫線や文字の色も、コピー元の書式に置き換わってしまいます。
このとき「値」を選んで貼り付ければ、取引先名の文字だけが貼り付けられます。
貼り付け先の罫線や色はそのまま残るため、一覧表の見た目は崩れません。
形式を選択して貼り付けの開き方|値のみはショートカットでも貼り付けられる
貼り付ける内容を選ぶ画面は、セルをコピーしたあとに次のいずれかの方法で開きます。
- 貼り付け先のセルを右クリックし、「形式を選択して貼り付け」を選ぶ
- 「ホーム」タブの「貼り付け」の下にある「▼」から「形式を選択して貼り付け」を選ぶ
- Ctrl+Alt+Vを押す
どの方法でも、貼り付ける内容を選ぶダイアログが表示されます。
よく使う項目は、右クリックメニューの「貼り付けのオプション」にもアイコンで並んでいます。
「値」「書式設定」「行/列の入れ替え」などは、アイコンを1回クリックするだけで貼り付けられます。
Microsoft 365版のExcelでは、Ctrl+Shift+Vで値のみを貼り付けることもできます。
2023年8月のバージョン2308で追加された操作です。
そのため、古いバージョンや買い切り版のExcelでは使えないことがあります。
ダイアログで選べる主な項目|値のみ・書式のみ・行列の入れ替え
ダイアログには多くの項目がありますが、初心者がまず覚えたいのは次の項目です。
| 項目 | 貼り付けられる内容 |
|---|---|
| すべて | 値・数式・書式など、セルの内容すべて(Ctrl+Vと同じ) |
| 数式 | 数式と入力された値(書式は貼り付けない) |
| 値 | 数式の計算結果と入力された値のみ |
| 書式 | 塗りつぶし・罫線・文字の色などの書式のみ |
| 列幅 | コピー元の列の幅のみ |
| 入力規則 | プルダウンリストなどの入力規則のみ |
| 値と数値の書式 | 計算結果と、カンマや通貨記号などの表示形式 |
これらの項目は、ダイアログの「貼り付け」欄から1つだけ選びます。
行と列を入れ替えたい場合は、ダイアログ内にある「行/列の入れ替え」のチェックボックスをオンにします。
古いバージョンの解説では、このチェックボックスが「行列を入れ替える」と表記されていることもあります。
実務では、右クリックのアイコンで済む操作が多く、ダイアログを開くのは「列幅」などを使うときが中心です。
アイコンの名前は、マウスポインターを合わせると表示されるため、迷ったときは確認してから選びます。
初心者がつまずきやすいのは、切り取り(Ctrl+X)の後にこの機能を使おうとする場合です。
切り取りの後は形式を選択して貼り付けを選べないため、必ずコピー(Ctrl+C)から始めます。
また、コピー元の点線の枠が消えると貼り付けができなくなるため、コピーしたら続けて貼り付けます。
Ctrl+CやCtrl+Alt+Vのようなショートカットキーを覚えておくと、コピーから貼り付けまでを手早く進められます。
Excelでよく使うショートカットキーは、次の記事でまとめて紹介しています。
形式を選択して貼り付けの違いとは?値・書式・行列の入れ替えを比較
ここでは、同じ売上表を使って、値・書式・行列の入れ替えの貼り付け結果を比べます。
| A | B | C | D | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 商品 | 単価 | 数量 | 金額 |
| 2 | りんご | 120 | 30 | |
| 3 | みかん | 80 | 50 | |
| 4 | ぶどう | 450 | 10 |
A列が商品名、B列が単価、C列が数量で、1行目は見出しです。
D2には次の数式を入力し、D4までコピーしています。
=B2*C2
D2には、単価と数量を掛けた「3600」が表示されます。
同じようにD3には「4000」、D4には「4500」が表示され、商品ごとの売上金額を求めています。
値のみの貼り付けとの違い|数式が0になる原因と対処
D2からD4の金額を、F2からF4に写したい場面を考えます。
D2からD4をコピーしてF2に普通に貼り付けると、F2には「0」が表示されます。
F2の数式を確認すると、次のように変わっています。
=D2*E2
貼り付け先が2列右にずれたため、数式のセル参照も2列右にずれたことが原因です。
D2の3600と空白のE2を掛けた結果になるため、0が表示されます。
そこで、F2を右クリックし、「貼り付けのオプション」の「値」を選んで貼り付け直します。
するとF2には「3600」、F3には「4000」、F4には「4500」が表示されます。
数式バーにも「=B2*C2」ではなく「3600」と表示され、計算結果だけが貼り付けられたことがわかります。
書式のみの貼り付けとの違い|文字は変えずに見た目だけ写す
次に、売上表の見出し行(A1からD1)に、水色の塗りつぶしと太字、罫線を設定したとします。
この見た目を、別のシートにある目標表の見出し行にもそろえたい場面です。
目標表の見出し行には、「支店」「目標」「実績」「達成率」と入力されています。
A1からD1をコピーし、目標表の見出し行の先頭のセルを右クリックします。
「貼り付けのオプション」の「書式設定」を選ぶと、見出しの文字はそのままで、塗りつぶしと太字、罫線だけが適用されます。
「値」とは逆に、文字や数値には手を加えず、見た目だけを写すのが書式の貼り付けです。
行列の入れ替えとの違い|縦と横を入れ替えて貼り付け
売上表のA1からC4をコピーし、A7を右クリックして「貼り付けのオプション」の「行/列の入れ替え」を選びます。
すると、縦に並んでいた商品名が横に、横に並んでいた見出しが縦に並び替わります。
| A | B | C | D | |
|---|---|---|---|---|
| 7 | 商品 | りんご | みかん | ぶどう |
| 8 | 単価 | 120 | 80 | 450 |
| 9 | 数量 | 30 | 50 | 10 |
7行目に商品名、8行目に単価、9行目に数量が並び、4行3列の表が3行4列に変わりました。
元の表のA列にあった「商品」「りんご」「みかん」「ぶどう」が、入れ替え後は7行目に横一列で並んでいます。
ここまでの3つの違いをまとめると、次のとおりです。
| 選択肢 | 貼り付けられるもの | 貼り付けられないもの |
|---|---|---|
| 値 | 計算結果・入力された値 | 数式・書式 |
| 書式 | 塗りつぶし・罫線・文字の色など | 値・数式 |
| 行/列の入れ替え | セルの内容すべて(縦横を入れ替える) | なし(向きだけが変わる) |
値のみ・書式のみで注意したい点|表示形式と条件付き書式
実務でよくあるのが、「値」で貼り付けたらカンマや通貨記号が消えたというケースです。
「値」はコピー元の表示形式を引き継がず、貼り付け先の書式に従って表示されます。
貼り付け先が標準の書式なら、「3,600」と表示していた数値も「3600」になります。
表示形式も引き継ぎたい場合は、ダイアログで「値と数値の書式」を選びます。
計算結果と一緒にカンマや通貨記号の表示形式も貼り付けられ、塗りつぶしや罫線は貼り付けられません。
初心者がつまずきやすいのは、書式の貼り付けで条件付き書式も一緒に貼り付けられる点です。
例えば、金額が4000以上のセルを赤くするルールを設定していると、貼り付け先にもそのルールが写ります。
貼り付け先で見覚えのない色が付いた場合は、コピー元に設定されていた条件付き書式を確認します。
条件付き書式のルールの確認や削除のやり方を知っておくと、意図しない色が付いたときも落ち着いて対処できます。
条件付き書式の基本的な使い方は、次の記事で紹介しています。
形式を選択して貼り付けはどう使い分ける?場面別の使い方
違いがわかったところで、実務でそれぞれをどんな場面で使うかを確認します。
値のみを使う場面|関数で作った列から元の列を消すとき
関数で作ったデータを残したまま元の列を削除したい場面では、「値」の貼り付けが欠かせません。
例えば、姓と名を別々の列に入力した名簿で、氏名を1つの列にまとめる場合を考えます。
| A | B | C | |
|---|---|---|---|
| 1 | 姓 | 名 | 氏名 |
| 2 | 佐藤 | 一郎 | |
| 3 | 鈴木 | 花子 |
C2に次の数式を入力し、C3までコピーします。
=A2&” “&B2
C2には「佐藤 一郎」、C3には「鈴木 花子」と表示されます。
「&」は文字をつなげる記号で、A列の姓とB列の名の間に空白を入れて1つの氏名にしています。
このままA列とB列を削除すると、氏名の列には#REF!エラーが表示されます。
#REF!は、数式が参照していたセルが削除されて、参照先が見つからないときに出るエラーです。
先にC2からC3をコピーし、同じ場所に「値」で貼り付けておけば、A列とB列を削除しても氏名は残ります。
書式のみを使う場面|毎月の表の見た目をそろえるとき
毎月同じ形の表を作る業務では、書式の貼り付けが役立ちます。
例えば、9月の報告表で整えた見出しの色や罫線を、新しく作った10月の表にそろえる場面です。
9月の表全体をコピーして10月の表に「書式」で貼り付けると、10月の数値は変えずに見た目だけがそろいます。
書式を一から設定し直す手間が省けるうえ、部署内で表の見た目を統一しやすくなります。
ただし、9月と10月で行数が違う場合は、足りない行や余った行の書式を個別に整える必要があります。
行列の入れ替えを使う場面|縦長の表を横長に直すとき
行列の入れ替えは、表の向きを変えたいときに使います。
例えば、「月」と「売上」の2列に1月から12月までを縦に並べた表を、報告書に合わせて横長にする場面です。
入れ替えると、1行目に1月から12月が横一列に並び、2行目に売上が並ぶ2行の表になります。
縦長の表は入力しやすい一方、スライドや印刷用の資料では横長のほうが収まりやすいことがあります。
入力用の表は縦長のまま残し、資料用に入れ替えた表を別に作ると、どちらの用途にも対応できます。
実務では、元の表を残したまま、空いている場所や別のシートに貼り付けるのが安全です。
形式を選択して貼り付けでも、貼り付け先にあるデータは上書きされるためです。
初心者がつまずきやすいのは、行列の入れ替えで表の大きさが変わることを見落とすケースです。
12行の表が12列に広がるように、貼り付け先の右側や下側にあったデータまで上書きされることがあります。
貼り付ける前に、入れ替え後の表が収まるだけの空きがあるかを確認しておきます。
形式を選択して貼り付けで迷ったときの選び方とは?実務での判断基準
値のみか数式ごとかの選び方|元データの変更に連動させるか
「値」と普通の貼り付けで迷ったら、元データが変わったときに結果も変わってほしいかで判断します。
変わってほしい場合は数式ごと貼り付け、その時点の数値で固定したい場合は「値」を選びます。
例えば、月末の在庫数を記録表に残す場面では「値」が向いています。
数式のまま残すと、翌月に在庫の表を更新したとき、記録したはずの月末の数値まで変わってしまいます。
集計結果を別のブックで他の人に渡す場合も、「値」で貼り付けておくと安心です。
別のシートを参照する数式を別のブックに貼り付けると、元のブックへのリンクを含む数式になることがあります。
受け取った人の環境では元のブックを開けないため、数値を正しく更新できなくなります。
書式のみ以外の選び方|列幅や入力規則だけを貼り付ける
見た目をそろえたいときは、「書式」以外の項目が役立つ場面もあります。
表を別のシートにコピーすると、列の幅が標準の幅のままになり、文字が途中で切れることがあります。
この場合は、コピー元の列をコピーして「列幅」で貼り付けると、列の幅だけをそろえられます。
プルダウンリストのような入力規則だけを別のセルに設定したい場合は、「入力規則」を選びます。
入力済みの値や書式はそのままで、選択肢から入力する仕組みだけを貼り付けられます。
行列の入れ替えと値のみを組み合わせる選び方|数式を含む表の場合
数式を含む表を行列の入れ替えで貼り付けると、セル参照も入れ替え後の位置に合わせて変わります。
その結果、参照先がずれて意図しない計算結果やエラーになることがあります。
こうした表では、ダイアログで「値」を選び、あわせて「行/列の入れ替え」のチェックボックスをオンにします。
計算結果だけが縦横を入れ替えた形で貼り付けられるため、参照のずれを気にせずに済みます。
例えば、売上表のA1からD4をコピーし、A7にこの方法で貼り付けたとします。
10行目には、金額の「3600」「4000」「4500」が数式ではなく数値として並びます。
実務では、「値」に変換する前に、数式が入った元の表を別のシートに残しておくと安心です。
値に変換した後は数式が消えるため、計算方法を確認したくなったときに元の表が役立ちます。
初心者がつまずきやすいのは、「値」で貼り付けた後に元の数式へ戻せないと気づくケースです。
貼り付けた直後であればCtrl+Zで元に戻せますが、ファイルを閉じた後は戻せません。
「入力規則」の貼り付けは、データの入力規則でプルダウンリストを設定したセルを増やしたいときに便利です。
入力規則の設定方法やプルダウンリストの作り方は、次の記事で詳しく紹介しています。
形式を選択して貼り付けまとめ|目的に合う選択肢で貼り付けミスを防げる
形式を選択して貼り付けは、コピーしたセルのうち、必要な内容だけを選んで貼り付ける機能です。
普通の貼り付けでは値・数式・書式がまとめて貼り付けられるため、数式が0になったり書式が崩れたりします。
この記事で紹介した3つの選択肢の違いは、次のとおりです。
- 値:数式を消して計算結果だけを貼り付ける。数式が0になるときや、関数で作った列を残したいときに使う
- 書式:文字や数値は変えずに、塗りつぶしや罫線などの見た目だけを貼り付ける
- 行/列の入れ替え:表の縦と横を入れ替えて貼り付ける。数式を含む表では「値」と組み合わせる
迷ったときは、元データの変更に連動させたいかどうかで、数式ごと貼り付けるか「値」にするかを判断します。
よく使う「値」「書式設定」「行/列の入れ替え」は、右クリックの「貼り付けのオプション」からすぐに選べます。
列幅や入力規則だけを貼り付けたい場合は、Ctrl+Alt+Vでダイアログを開きます。
まずは、数式を含むセルを「値」で貼り付けるところから試してみると、違いを実感しやすいと考えられます。
貼り付けの選択肢を使い分けられるようになると、表の作り直しや数式の修正にかかる時間を減らせます。
形式を選択して貼り付けのほかにも、Excelには作業を効率化できる機能が多くあります。
Excelでできることを一覧で確認しておくと、次に覚える機能を選びやすくなります。





