「AIがあればExcelは簡単になるらしい」
そんな話を耳にする機会が増えました。
しかし、実際の現場でどう使えばいいのかと聞かれると、具体的に説明できる人はまだ多くありません。
関数の使い方を知ることと、仕事で使いこなすことのあいだには、思っている以上に距離があります。
実務では、毎回データの形式も依頼内容も異なります。
教科書通りの問題はほとんどありません。
だからこそ今回は、できるだけ現実に近い業務シナリオを通して、AIとExcelをどのように組み合わせれば効果的なのかを整理していきます。
目次
シナリオ① 月次売上の集計を任された場合
上司から「Aさんの今月の売上合計を出しておいて」と依頼されたとします。
シートには、A列に担当者名、B列に売上金額が入力されています。
関数に慣れている人ならSUMIFを思い浮かべるかもしれません。
しかし、初心者の場合はここで手が止まりがちです。
この場面でAIは有効な補助になります。
たとえば、次のように質問できます。
A列に担当者名、B列に売上があります。
Aさんの売上合計を出したいです。
どの関数を使えばよいですか。
AIはSUMIFやSUMIFSを提案してくれるでしょう。
ただし、式を貼り付けて終わりにしてしまうのは、もったいない使い方です。
なぜSUMなのか。
なぜIFが付くのか。
条件はどの引数に入るのか。
そこまで確認してはじめて、理解が積み上がります。
シナリオ② 合否判定を一覧表示する場合
点数一覧から70点以上を「合格」、それ未満を「不合格」と表示したいケースを考えます。
この場合、AIに質問する際の鍵は「条件を具体的に言語化すること」です。
「合否を表示したい」とだけ伝えるのでは不十分です。
基準は何点か。
点数はどのセルにあるのか。
結果はどこに表示するのか。
こうした前提を整理してから質問すると、IF関数の式が的確に返ってきます。
このプロセスは単なる作業ではありません。
条件を曖昧にせず文章として明確にすることは、思考を整える訓練でもあります。
AIを使うことで、むしろ自分の整理力が試されるのです。
シナリオ③ 集計結果が合わないと指摘された場合
実務で最も緊張する瞬間のひとつが、「数字が合わない」と言われたときです。
SUMIFを使っているのに合計がずれている。
その原因は、必ずしも関数の書き方とは限りません。
データに余計なスペースが入っている。
全角と半角が混在している。
空白セルが想定外に含まれている。
条件範囲と合計範囲がずれている。
こうした細かな要因が、結果に影響します。
このようなときにもAIは役立ちます。
「SUMIFを使っていますが、合計が正しくなりません。考えられる原因を教えてください。」と質問すれば、確認すべきポイントを整理して提示してくれます。
ただし、最終的にデータを見て判断するのは自分です。
AIは可能性を示してくれますが、責任まで引き受けてくれるわけではありません。
シナリオ④ 報告資料の文章作成
集計が終われば、次は報告資料の作成です。
数字をまとめたあと、文章に落とし込む作業に時間がかかることも少なくありません。
たとえば、
「今月はAさんの売上が前月比120%でした。上司向けに簡潔な報告文を作ってください。」
と依頼できます。
AIは整った文章を提示してくれるため、ゼロから考えるよりも短時間でたたき台を用意できます。
ただし、表現の強さやニュアンスが適切かどうかは必ず確認が必要です。
社内文化や読み手の立場までは、AIは完全には理解していないからです。
AI時代に求められるExcel力
ここまでのシナリオを通して見えてくるのは、AIは作業を大幅に効率化する一方で、「何をすべきか」を決める役割は人間に残るということです。
関数を暗記する力よりも、状況を整理し、適切な問いを立てる力。
そして、データを読み取り、結果の意味を考える力。
そうした力こそが、これからのExcel力の中心になります。
AIは高性能な電卓のような存在です。
計算そのものは瞬時に実行できます。
しかし、どの計算を選ぶのかを判断するのは自分です。
実務でAIを活かすための手順
現実的な活用法として、次の流れを意識すると効果的です。
まず自分の言葉で状況を書く。
条件や目的を具体的に整理する。
AIに質問する。
返ってきた式や文章を検証する。
必要に応じて修正し、理由を理解する。
特に重要なのは検証の工程です。
ここを丁寧に行えば、AIは単なる便利ツールではなく、学習を加速させる存在になります。
まとめ
AIはExcel業務を確実に効率化します。
しかし、学習が不要になるわけではありません。
求められる力が変わるだけです。
関数の丸暗記ではなく、状況を整理する力。
条件を分解する力。
データの意味を読み取る力。
これらを土台にしたうえでAIを活用すれば、実務のスピードと精度は大きく向上します。
AIは補助輪のような存在です。
進む方向を決め、ハンドルを握るのは常に自分です。
その前提を忘れなければ、AIは強力な味方になります。


